「移住して農業したい」の一言に心配になるこの感じ
すっかり久々の更新になってしまいました。
最近は移住サポート業務のほか、
地域おこし協力隊の任期終了後に向けて起業の準備(マスタードを原料から作る会社)を行っています。
畑の管理から、事業計画書、資金集め、プロモーションなど考えることがたくさんあって、「起業ってのは、面白いけどめちゃくちゃ大変」と痛感している日々です。
そこで日々思っているのは、「農業も起業と全く同じ」という事です。すんごい大変だと思います。
よく移住相談で「移住して農業したい」という方がいらっしゃるのですが、そういう方々に「無闇に農業を勧めていいものか…」と葛藤があります。
そんな私の考えをまとめてみたいと思います。田舎生活を考えている方の参考になれば!
(※否定的なことも書きますが、個人的には農業はやりがいのある職業と思います。就農したい方も応援しています!)
家庭菜園の方が楽しいですよ?
「私の考え」といったそばから人様のブログを紹介します。
就農ってそんなに簡単なの?農家になった僕が教えちゃうよ。 | フリーランス農家
フリーランス農家「きしころ」さんの記事です。IT会社勤務から農家に転身したきしころさんの記事を読んで、めちゃくちゃ共感しました。
特に
「自分の食べているものに関心がある。(無農薬野菜が絶対)という場合は、家庭菜園で十分な場合がほとんどです」
に超共感。
なんとなく「移住して農業したい」と思っている人にとっては、これがベストな田舎生活だと思います。家庭菜園はとっても楽しいですが、そこに生活するためのお金が絡んでくると、とたんにシビアになってきます…。
他にも、
「直売所に並ぶ作物。それは…年金受給者が作ってる作物」
という指摘も鋭い。直売所に行ってみるとびっくりするのですが、価格設定が本当に低い。きゅうりが5本も10本も入って100円とかザラです。
土を耕して、種まいて、害虫&雑草と戦いながら、やっと収穫できたものを、袋詰めして、それを軽トラで運んで、自ら売り場に並べる。この努力の結晶が破格の値段で売られているのです。
「年金」という生活費の基礎がある人と、価格で勝負しても絶対勝てません。
もちろん農協に卸すという手もありますが、結構な量を作らなければ厳しいのでは…?と思います。
「作る」こともだけど「売る」センスも大事!
私も農業をかじって、今は6次産業的なことをしていますが、やはり「付加価値」をどうやって付けるかが肝だと思います。
農業を始めようとすると、栽培技術に気が行きがちですが、「売り方」がとても大事です。
直販が手元に入ってくるお金が一番多いと思いますが、顧客を見つけたり、配送業務とか、クレーム対応とかそれなりに仕事が増えて大変です。
かといってどこかに卸すとなると楽ですが、マージンを取られます。規格も厳しかったりして、B品扱いされる収穫物が増えそうです。
悩ましい…。
私はマスタードの原料であるカラシナを栽培して、先月初収穫をしました。しかし、当初の見込みの10分の1ぐらいしか獲れなかった(笑)。売上試算をして愕然(笑)
さすがにここまでのやらかしは無いにしても、天候などで大きく計算が狂うリスクもあります。
「経営者」になる面倒くささ
中には「社長になりたいから農業をやりたい」という人もいるかと思います。誰にも指示されず、自分の采配で、好きな時間に働きたい。理想ですよね。
でもよく考えると、「会社に行くだけで給料がもらえるってすごいありがたいことかも知れない」と最近思います。考えることが圧倒的に少ない。
経営者になると、経費処理とか、税金に関することとか何だか仕事の「核」以外に考えることが増えます。アウトソーシングもいいですが、軌道に乗るまではそのお金をなかなか捻出できません。
私もぼちぼち経営について勉強しなければいけないのですが、面倒だし、難しそうだし…。
みんなどうしてるんだろう?と宙を見つめる日々です。
考えることが多すぎて、休日も仕事のことがちらつきそう。というか休日なんて概念がなくなるかも。
でもやっぱ農業面白い!意外となんとかなる!
ネガティブなことを羅列しましたが、楽しいこともたくさんあります。
「植物ってこうやってできるんだ~」「こうやってやれば作業が楽になる」と発見が多いです。そして肉体労働なので「生きてる!」って感じがして、清々しい。ご飯がうまい。
農業をやっていると「生きる力」っていうのが高まる気がする。たくましくなるというか。生活サイクルも健康的になると思います。
難しいこともあると思いますが、やってやれんことはないと思っています。
失敗したらバイトとかして、凌げばいいのです。なんとか生活していけます。
最初は道具も畑も揃えるのが大変ですが、時間をかければなんとか集まると思います。(畑に関しては耕作者が減っているとはいえ、なかなか見つけられません。整備不要の“やりやすい土地”は地元の人たちが使っていることが多いです)
「移住して農業したい」という人は、自分は一体どういう生活をしたいのか?何が本質的な目的なのか?というのを今一度じっくり考えてみて欲しいです。
私も安易に農業を勧めて「こんなはずじゃなかった」という人を減らすために、魅力と一緒に大変さも伝えられるように頑張っていきます。